迷子ペットを捜すためには〈1〉

【第1回】迷子に備える予防策

我が家で迷い猫を保護したことがきっかけで、当サイトを開設した。少しずつ捜索掲示板に書き込みが増え、サイト管理者としてはうれしい反面、ペットがいなくなった飼い主の気持ちを思うと同情してしまう。

じつは私もペットが迷子になった経験がある。迷子になったのは、うちで完全室内飼いにしていた猫で、当時3歳の黒猫だ。かれこれ10年以上の前のことだが、風呂場の窓から脱走して、どこかへ行ってしまった。

開いていた風呂場の窓はわずかなすき間で、まさかそこから出ていけるとは思わなかったのだ。このくらいなら大丈夫だろうと、換気のために開けていたのだが、油断していた。住んでいたのが賃貸マンションの4階だったというのも、油断の原因だった。外に出ていくためには、階段を降り、マンションの出口のドアを通らなくてはならなかった。どういう経路を辿ったのかは謎のままだが、黒猫は外に出ていった。

当時、インターネットは一般的ではなく、もちろん迷子掲示板のような便利なものはなかった。捜すためには自力でやるしかなかった。結果的に黒猫は見つかり、連れ帰ることができた。その黒猫は健在で14歳となり、我が家の7頭の猫たちの育ての親として、今日も元気である(笑)。

このコラムでは、そうした経験もふまえて、迷子ペットを捜すにはどうしたらいいのかを書いていく。参考になればと思う。

なお、私が飼っているのは猫なので、迷い猫の場合を想定している。ふらふらと外に出ていくのは猫の方が多いだろうし、他のサイトの迷子掲示板でも猫の方が多い。犬は本来群れの動物であり、帰巣本能が強いので猫ほどには迷子になりにくい。とはいえ、最近は犬も都会化しているのか、家に帰れない犬が増えているらしい。迷子犬の場合にも、参考になるかと思う。

■迷子に備える予防策■

迷子になってしまってから、はじめて気がつくことがある。
「猫がこんなところから出ていくとは思わなかった」
「まさかこの子が外に出るとは考えもしなかった」
「迷子札をつけておけばよかった」
「写真を撮っておけばよかった」

……などなど。いざ、実際に直面しないと、実感できないことは多い。万全の策はないものの、日頃から心がけておくことはいろいろとある。

 

【予防策・その1:猫は完全室内飼いに】

多くの方が都会で猫を飼っていると思う。都市の規模の違いはあっても、ビルや住宅が建ちならび、交通量の多い道路が近くにあるのではないだろうか。猫が家を自由に出入りして、外と家の間で猫らしい気ままな生き方を……というのは、大昔の話か田園地帯が広がるような恵まれた環境の場合だけである。ことにアパートやマンションで飼っているなら、近所迷惑も考慮して室内飼いに徹した方がよい。

猫が可哀想……という考えかたもあるが、むしろ危険の多い環境を心配した方がいいだろう。ただ迷子になっているだけならいいが、交通事故に遭う可能性は高いからだ。私の友人がアパートで飼っていた猫は出入り自由だったのだが、迷子になってから数日後に車にひかれた無惨な姿で再会した。これ以降、友人は教訓として猫が部屋から出ないようにした。

狭い部屋に猫を閉じこめていたらストレスがたまる……ということも一理ある。だが、死なせてしまうよりはいい。猫がストレスをためないように、一緒にいるときには十分に遊んであげることだ。ちなみに、猫にとっての運動は歩いたり走ったりよりも、高さ方向へのジャンプである。猫グッズとしての「猫タワー」などを購入して、部屋の中で天井近くまで登れるような室内環境を作ってあげるといいだろう。

完全室内飼いにするのは、外にいる猫と接触することで、蚤や病気が伝染しないための予防でもある。蚤のことは意外と軽く見られがちだが、寄生虫や病気を媒介もする。猫の健康管理のためにも、室内飼いにした方がよい。

犬の場合には、散歩というのは不可欠な要素だ。犬の習性上、運動とマーキングのために毎日の散歩は欠かせない。私の実家(戸建て)では数頭の犬を飼っていたので、犬とのつきあいも長い。現在住んでいるマンション(ペット可)では猫だけだが、マンション暮らしの犬は猫以上に厳しい環境だろうと思う。それでも、毎日欠かさず散歩をさせていれば、周辺の状況を覚えられるだろうし、自分のテリトリーがどこまでなのかを把握できるはずだ。

【予防策・その2:首輪と迷子札】

以前、うちの黒猫が迷子になったとき、決め手になったのは首輪だった。黒猫はどこの黒猫でも似たようなもので、他人にはなかなか区別がつかない。発見してくれた人は、私が近所の家々に放りこんだ迷子チラシに書かれた特徴から、「赤い首輪」という目印で連絡してくれたのだ。

そうしたことから、首輪は目立つ色がよい。黒猫に黒い首輪では、首輪をしているのかどうかも判別できないかもしれない。迷い出た猫は怯えていて、なかなか人には近づかないものだから、ある程度の距離からでも目立つものがよい。

そして、保護してくれた場合に、飼い主への連絡が取れるように、迷子札を付けておくとよい。自作のものを付けてもいいが、紙やテープを貼り付けたのでは取れてしまう可能性がある。ここはひとつ、ちゃんとした金属製の迷子札を付けておくことだ。

関連して「ペットの住民票」という有料サービスを行っているところがある。(財)日本動物愛護協会・岐阜県支部というところだが、HPの内容を見る限りではどれほどの効果を上げているのかは判然としない。ひとつの方法ではあるが、まだこういうサービスがあること自体の認知度が低いように思う。年会費が3500円となっているが、先の迷子札のお店では1個が2000円前後である。どちらがいいかは考えどころ。(注:2002年の話)

【予防策・その3:写真を撮っておく】

当サイトで迷子について情報を書き込んでくれている中でも、写真がないのはなかなか難しいものがある。特徴を文章で記述しても、漠然としていてイメージできることには限界があるからだ。
視覚的に「この猫」という決定的なものが必要だ。

また、写真は迷子を保護した人との確認のためにも必要だ。うちにも現在保護猫が居候しているのだが、もし、飼い主だという人が現れても、本当にその猫なのかどうかは、話を聞いただけでは判別できないからだ。

世の中、残念なことに動物に対して悪意のある人はいる。動物好きを装って、里親募集などで手に入れた動物を、実験動物として売り飛ばしたり、虐待目的で手に入れる人間がいる。

加えて、迷子を保護してくれた人と対面するときに、「うちの猫(犬)はこの子です」と証明できる写真は用意しておいた方がよい。

日頃からペットの近影を撮っておくことをお勧めする。それも顔だけとかではなく、いろいろな角度から撮っておくことだ。特徴的な部分は決め手になるはずである。

【予防策・その4:ペットの行動パターンを知っておく】

家と外に出入り自由の猫の場合、普段猫がどういう行動パターンをしているかを、ある程度知っておくことだ。行動範囲やよく行く場所を知らないと、見当違いの場所を捜すことになりかねない。

室内飼いの場合は外に出てしまうと、まったく予想がつかない。ただ、猫は堂々と道を歩いたりはしないものだ(笑)。物陰から物陰に移動するし、目撃すること自体が希だろう。しかし、猫が行ける範囲は限られている。数キロ先まで行くことはほとんどなく、数百メールの範囲内に隠れていることが多い。ただし、車や人に驚いて暴走しているうちに、遠くまで辿りついてしまうことはありえる。

そもそも猫は昼間よりは夕方から夜にかけて行動する。昼間の捜索の方がしやすいが、暗くなってからの捜索も必要だ。自宅から逃げだした場合には、周辺の状況を把握しておいた方が、捜すポイントを絞り込みやすい。近所に野良猫や外飼いの猫がいるなら、それらの猫の通り道や集まる場所はチェックしておこう。迷子猫もつられて近い場所にいるかもしれない。避妊をしていない猫だったら、発情期に外の猫と接触する可能性が高いからだ。

犬の場合には、普段の散歩コースは要チェックである。遠くまで散歩に行っているなら、それだけ捜索半径は広がる。たいていの場合、犬はテリトリーの範囲内で行動するからだ。

以上が、とりあえずやっておける予防策だろうと思う。


次回は「迷子になったとき、最初にするべきこと」。